今回は「人狼ゲェムのフォーヴィスム ~檻にいるのは獣か人か~」を紹介していきます。
人狼ゲームが舞台のデスゲームノベルですが基本的は人狼ゲームとは異なるルールがあり、楽しめました。
こちらのBOOTHページから無料でダウンロードできます。
あらすじ
命がけの人狼ゲームで人狼となった少女(主人公)は、もう一人の人狼、十和田ユウジと生還を目指して奮闘する。 だが、このゲームにはいくつかの変わった特徴があった。
一つは、人間側は殺人にかかわったものが選出され、人狼側は殺人の遺族が選出されるというもの。 もう一つは襲撃時に人間からの反撃によって人狼が死亡した場合、その人間が新たな人狼に成り代わるというものだ。
4日目の晩、襲撃に失敗しパートナーのユウジを失った主人公はユウジを殺したレンと新たにコンビを組むことになってしまうが特殊ルールを通して彼の敵討ちを思いつく。
多くの人狼ゲームとは違う特殊なルール
一般的な人狼ゲームと大きく違う点は「返り討ち」というシステムです。先程のあらすじにもあるのですが人狼から人間への襲撃の際に役職関係なくどのプレイヤーでも人狼に対して反撃ができ、その反撃で人狼を殺害した場合は自分が人狼陣営に移り変わるというものです。
私は人狼系のデスゲームノベルや小説を沢山読んでいますがこのルールは初めて見たので新鮮に楽しめました。
本編で活躍するメインキャラの前日譚
作者様のツイートで
メインで作ってるデスゲームの前日譚となる中編ノベルゲームです。
人狼ゲームをモチーフに本編に敵として登場する夜逆トウマが過去に参加したゲームが展開されます。
とありました。
夜逆トウマはデスゲームに必ず1人はいる頭がキレる頭脳派プレイヤーです。味方なら心強いけど敵なら厄介なやつでこの前日譚でも主人公の味方になったり敵になったりと深く関わりがあります。
乙女要素は殆どない本格派人狼ノベル
またBOOTHの紹介ページに『一般向けですが乙女ゲー作者が作ったゲームというとしっくりくるようなそんな感じの要素があったりなかったり。』とありましたが私の感覚ではそんな要素は感じられませんでしたので恋愛要素が嫌い・苦手な人でも全然プレイできます。
選択肢が沢山ありますがフローチャートがあるので回収は簡単です。プレイ時間ですが作品ページには2~3時間とあります。私は細かくスクショを撮りながらゆっくり読みながらだったので5~6時間はかかりました。
人狼に興味のある方やミステリーデスゲームモノが好きな方には特にオススメできます。
全て無料でプレイできるので気になった方は是非プレイしてみてください。
ネタバレレビュー
ここから先はクリア後推奨のネタバレレビューです。書きたいことが多かったので長文になっています。
無料のクオリティとは思えないとても面白いノベルゲームでした。
私はパソコンでするゲームがあまり好きではなくてスマホアプリやスマホのブラウザからできるゲーム以外は実況や配信を見て済ませることが多いのですが、タイトルで検索しても出てこなかったので一度諦めかけましたがどうしても内容が気になって自分でやろうと思いDLしました。
正規ルートを最後に残し、全てのエンドを回収した感想ですが正直にいうと…胸糞だなと思いました。これも本編の前日譚で夜逆トウマがメインで彼が主役なストーリーだからなのかなと思っています。
主人公の立ち絵や名前がないのもなくて良かったなと思いました。彼女は人狼を引き、全キャラの中で1番多くの人物を殺して来ていますが姉の事故とユウジの父の真相を知ることなく無念に死ぬルートがトゥルーエンドなのは悲しすぎます。
ストーリー・ゲーム内容全体の感想
各キャラについての感想の前にまず「人狼ゲェムのフォーヴィスム ~檻にいるのは獣か人か~」のストーリーとゲーム内容について語ります。
まずストーリーですが【気がつくと若者数十人が監禁されていた。殺人ゲームを強要される。ゲームマスターの指示は絶対】というオーソドックスのストーリーです。しかしいきなり4日の襲撃パートから始まっており、12人いたプレイヤーも主人公含めて6人まで減っています。
前日譚なのもありなぜ彼らを監禁したか、どうやって監禁したか、どんな目的があるのか、どんな資金源なのか等一切語られなかったですが本編では語られることを願っています。
私はデスゲームにおける大事な点は魅力的なキャラクターやハラハラする展開は勿論、デスゲーム運営の背景もとても重要だと思っています。
次にゲーム内容ですが4日目から始まり6人しかいない状態。そして役職がないのにあっさりと終わらず、ここまで面白い推理戦が繰り広げられていたのは作者様のシナリオ構成力と文章力に嫉妬してしまうレベルです。
各キャラへの感想
最初は暁月カズミについてです。彼女は多くのデスゲームにいるヒステリック感情論系の女キャラでした。ユウジを除くメインの6人では1番に死んでしまうキャラで印象も少ないです。正直好きなタイプではなかったのですが
唯一格好いいなと思ったのははケイを守るために自分へ投票を促したところです。感情論タイプがこういう行為をするとは思えなくてこのシーンは私も「おっ!」となりましたがその後最悪な形となりました。
彼女が生存できる可能性ですがパニックになって返り討ちもできそうにないので人として勝利するしかないのですが討論も弱くすぐに墓穴を掘りそうなので0に近いと思います。
次は幽鬼レンです。主人公の相棒を無惨に殺害し、主人公とプレイヤーに最悪な印象を与えて登場した彼ですが主人公が生き残るにはトウマと組まず彼と組んだ状態でしか可能性はなかったと思います。
彼がユウジに行った行為は許せるものではありませんが彼は『どうしようもないクズ』ではないと思うんです。ユウジをこんなふうに殺したのは確実に殺して返り討ちを成功させる必要があったことと、今まで他の人を殺していた人狼に恨み、憎しみがあったからだと思います。
彼が生き残る方法ですが間違いなく主人公たちに襲撃される、そして返り討ちするので人としての生存は難しいでしょう。そしてストーリー通りに4日目に人狼になった場合、ユウジの遺体の状況からその日や次の日には返り討ちを疑われ投票で殺害される可能性が高いです。
トウマを襲撃=死亡でこのゲームは人狼と人が同じ数になってもゲームが続き襲撃しないといけないためかなりキツイです。トウマがあのトラップを作るのを事前に防ぐか、トラップの内容を予測すれば勝てますが主人公ですら思いつかなかったので無理だと思います。
次に薄暮ケイについてです。おそらくトウマの次に冷静で頭が良く、最初の投票のシーンなどを見るにリーダーシップもあります。
彼は勇敢で正義感が強く格好いいキャラでした。特に主人公がトウマに投票するのを予想して庇い、後を託すシーンは目頭が熱くなりました。
まぁそんな彼にも失態、明確な欠点がかるのですが…。それは後で、彼が生き残る方法を考えてみます。彼はカズミとは違う理由で返り討ちは失敗しそうなのでストーリーと同じ人として生存ルートを考えます。
ですがトウマから目をつけられている時点で厳しいと思います。後述しますがやはり襲撃の際にバッドエンド3の返り討ちを成功させてれば生き残れたんですがね…。
次に麻宵サクラです。大人しく自分の意見をあまり持たない彼女ですが投票シーンでは決定的なポジションになることが多く、トウマが生き残る戦犯の大半はコイツです。
表情の変化でユウジが人狼だと睨んだりと観察力はあるみたいですが基本的にオドオドして思考放棄してしまう無能です。
「トウマくんさぁ…私のこと分かった気でいたんだろうけど…ざーんねん!死んでぇ?」とゲス顔で笑いながらトウマに投票みたいなシーンがあったら惚れてましたがそんなシーンは勿論なくただただ頭も精神的にも弱い子という印象です。
それにしても主人公以外の女子2人が非頭脳キャラなのはどうにかならなかったのかと不満な点です。男子が3人中2人(トウマとケイ)が頭脳派なので女子も主人公ともう1人、どっちかは頭脳派であってほしかったです。
一応生存ルートについて話しますが彼女は投票で死ぬ可能性は低いと思いますが結局最後に人狼に襲撃され、返り討ちできるわけもなく死ぬのが確定してます。
ケイを釣るルートでトウマが1人でサクラを襲撃しに行きますがあれでサクラが扉開けた瞬間のトウマを刺し殺してたりしたら最高だったんですが。
最後にこの作品の悪魔である夜逆トウマについて語ります。最初は魅力的なキャラだなぁと思ってましたが途中からどうしたらコイツに勝てる、どうしたらコイツを殺せるのかとずっと考えながらプレイしていました。
彼が頭の回転が早く、討論も強いのは良いのですがストーリー全体がトウマ中心に進んでいたというか…とにかく不気味なやつでした。主人公もトウマに対して恐怖感をもっていましたが私も主人公と気持ちがリンクしていました。
転落ルートでトウマが主人公が人狼だという根拠を述べるシーンですがこの後『彼の根拠は全く破綻しておらず、今日の話し合いだけを見れば私が人狼だと確定しただろう。』とありますがこれってどんな根拠なのか具体的に教えてほしかったです。
前日にケイとカズミが人狼だと言っていたのに急に心変わりして他2人は怪しい、おかしいと思わなかったんでしょうか。
狂人といえば正規ルートの投票前のシーンでケイが『これは命懸けの殺人ゲームだからふざける奴はいない。狂人という職はあっても本物の狂人は存在しない』と言っていましたが…人狼だがわざと怪しい狂人のフリをして逆に釣られないようにするようなプレイまで考えなかったのかと思いました。トウマの異常性を彼は知っていたはずなのにここの発言は少し違和感がありました。
死亡END3について
これはケイと事前に電話をしてトウマを殺そうと持ちかけたが逆に殺されてケイが自殺してトウマの1人勝ちエンドです。
このエンドを見てた時にケイに対して凄いイライラしました。
まずスタンドライトを分解して槍を作って返り討ちする気満々だったのになぜかベッドに座ってゆっくりしてるケイ。
トウマがドアから入って来た瞬間に攻撃しろよ言いたいです。
主人公に攻撃が当たらないように躊躇したのかなと思いましたがガッツリ部屋に入ってトウマが一言二言言ってる間にも攻撃しないケイ。殺す気あるのかと。
そもそもケイは電話で主人公に
『分かった。君の提案を受けるよ。あと俺は槍を武器にして彼を殺すつもりだよ。だから部屋にはなるべく彼を先に入れて。彼の姿を確認次第すぐに刺すよ。もし急所を外して暴れたりしたら君も加勢してね。その間に確実に殺すから。』
頭が異常にキレる不気味なトウマを協力して殺すのならこのぐらいは伝えておくべきだったんです。トウマとケイは体格や運動能力にそこまで差はないと思いますしリーチの差で確実に殺せたはずです。
一応ケイを擁護するなら
・殺すのに迷いがあった。
・テンパっていた。
・説得から入るつもりだった。
とかでしょうか。とはいえここまで生き残って来て、武器も用意して、自分が生き残るためにという大義名分がある状況にしてはどの理由も甘すぎますね。
ケイの言葉足らずと詰めの甘さで主人公は苦痛の想いをして死ぬ羽目になったんです。
それと彼は最後に自分の首にガラスペンを突き刺して自殺しましたが、これも結局死ぬのなら最後にトウマの顔面や首に向けてガラスペンをぶん投げてやればよかったのにと思いました。
ゲーム終了後の暴力ということでおそらくケイはベルにその場で殺されますが致命傷にならなくてもトウマに深い傷は残せます。もしベルがあり得ない程の運動神経で近距離から投げられたガラスペンをキャッチしたり防いだとしてもただ死ぬだけよりマシな気がします。ガラスペンでブッ刺して死ぬよりベルに射殺された方が楽に逝けるでしょうし。
トウマがただ嫌々殺人をしていた可哀想な人狼ではなく、今自分の目の前で仲間を見捨てて殺した本性を表したクズというのがハッキリしているんですからそのぐらいしてもいいはずです。
ケイは冷静で正義感があり格好いいキャラだとは思いますが性格が優しいというか甘い…詰めが甘いんです。
最後のイキリ散らかしてるトウマも含めて最悪のストレスバッドエンドでした。
キャラの言動に対して多くの疑問や不満がありましたが、あくまで本編の前日譚で夜逆トウマがメインで彼が主役なストーリーだからなのかなと思っています。ここ数年で1番の8000文字という文字数で記事にするぐらい熱量があったノベルでした。
現在乙女ゲームの方を優先して制作されているみたいですが本編が完成されることを心よりお待ちしてます。4日目、生存6人でこのボリュームだとしたら1日目からプレイできるならとんでもないボリュームになりそうで楽しみです。